2003年10月
DTP WORLD/オシゴト拝見 Vol.52 大溝裕(Glanz)
―――まず『spoon.』を手がけるようになったきっかけを教えてください。
斉藤まことさんが『H』(ロッキン・オン)を編集していたときに、何度か仕事をしたことがあったんです。それで『spoon.』立ち上げの際、斉藤さんから「いっしょにやりませんか」と打診されて。水谷孝次さんの事務所にいた頃から広告が中心でしたから、100ページ前後の雑誌を手がけることについて最初はやや躊躇もしましたが、逆にそういう依頼はめったにないことだと思って引き受けたんです。創刊号ではフォーマットをつくったんですけど、2号目からは結局、特集の内容ごとにレイアウトを変えています。たとえば、各特集が各々広告なり個別の雑誌だとしたら、それをエディトリアル的なルールにとらわれず、内容に応じてデザインし、それを10〜15個くらい束ねたものが『spoon.』という感覚ですね。
―――ギャラリーや美術館の仕事も数多くされていますね。
もともとビジュアル表現全般に興味があったので、自分の中でデザインとかアートとか、そういう境界線は気薄ですね。だからポスターやカタログに関しては、ポップで、より多くの人が興味を持てるようなものにしたいと思っています。とくにアートの場合、難解なイメージを打ち出すのではなく、「こういう見方もあるんだよ」というような意識でデザインしています。
―――Macを使い始めたのは?
横尾忠則さんが94年に『電脳カーニバル』という作品集を刊行したんですよ。それに衝撃を受けて、Macを買いに走った。(笑)それまでMacを使ったデザインは、どれも「デモンストレーション」にしか見えなかったのに、横尾さんのパワーはMacのパワーを上まわって見事に「作品」になっていた。使う人が使えば、Macも立派な道具なんだと思い知らされました。実際、Macを使い始めると、想像していた以上に発想の幅が広がっていったんですね。たとえば文字を反転させたりするのがすぐにできてしまう。手作業でやったとしても、それほど面倒ではないのですが「ちょっとした手間」の違いは大きかった。
そういうふうに「Macでなら簡単にできること」になじんでいくと、それがアナログの方にもフィードバックしていくんです。そのうち、どんどん「頭の中のイメージをかたちにする」ということを超えたデザインをするようになっていった。
―――「まずMacありき」の世代を、どう考えていますか。
当然のことですが、グラフィックデザインの最終的な出力は印刷されたものです。もしかすると若い世代の中には、デザインがモニタの中だけで完結している人たちがいるかもしれない。そうなってくると、質感やインクで決まるということにあまり意識が向かないんじゃないかな。一方で、そういった世代は今までのグラフィックデザインの常識にとらわれず、何か特有の感覚を共有していて、そのうちその中から全く新しい表現が出てくるような気もしているんです。ワールドカップの熱狂を体験した小学生が、10年後にどんなプレーをしているのか。それと同じく「まずMacありき」の世代が、次代のデザインをどう展開していくのか楽しみですね。
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